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「神聖にして侵すべからず」体験版感想

考えてみればPULLTOPさんの二次創作しかしていない気がする。
と、言うわけなので。私の本業は評論・批評ではなく創作なのですが、文筆者として感想文コンクールに便乗してみることにしました。
ポエム全開ですが良いこと言ってると思います。






これは、脆く儚く、誰もが夢見、誰もが諦めたはずの、御伽話。



猫庭に移ったファルケンスレーベン王国は、あくまで大地主というだけで、国際的に認められた王国ではなかった。それでも猫庭の人々は、王国を認め、王を敬い崇めた。
王国が没落してからも、かつての国土であった線路のこちら側に済む人々は、晴華を王として認めている。
瑠波の、隼人の住む猫庭は、そんな優しさ――欺瞞――で満ち溢れた世界だ。
その欺瞞を許さない人々がいつかきっと現れる。それは国友かも知れないし、実蒔かもしれない。或いはもっと大きな、或いはもっと小さな誰かが。小さな穴を空けた時に、王国は即座に瓦解する。
瑠波はいつでも女王を辞められるし、隼人が騎士を辞めるだけで、王国の存亡は決されてしまう。
瑠波も隼人も、それを理解している素振りを見せる。

〝そういうことになっておる〟〝出来うる限り、有るように振る舞う様にはしておる〟

猫庭の地に根付く地域信仰、猫の揺り駕籠。いずれ神事が絶えるように、消えていく運命が約束されている。
いずれ消えていく物の美しさ。読者である私たちは、それを感じずにはいられない。
どこにもない。なにもない。だからこそ、優しく在れる。
王国が王国である限り、高貴なる者の義務がある。だが王国には何もない。だから、出来ることと言えば、寛容であること。拒まないこと。それくらいしか、ない。
それをただ愚直に。ひたむきに守る瑠波は、例え国土が小さくとも、国力が乏しくとも、紛うことなき女王である。
王を王たらしめるのは、財でも、血筋でも、権力でもない。王を慕う国民である。
瑠波を慕う猫庭の民は、未だ尽きることを知らない。王国の事情を知る操も、むしろ王国を維持するために協力してくれている。二人の子供が、寂しさを紛らわせるために始めた「ごっこ遊び」。それが今も続いているのは、偏に猫庭の優しさにあるだろう。

優しい嘘を吐き続ける猫庭には、いつか報いを受ける日が来るはずだ。それが優しさであれ、欺瞞であれ。真実以上に、嘘は脆く、儚い。
嘘が嘘となったとき、彼らは一体、どうするのだろうか。
日常となった嘘から、非日常の真実へと戻った時に。彼らは――優しく、在れるのだろうか。


だからせめて。私は一読者として祈る。世界に優しく在ったちっぽけな彼らを、世界がまた優しく包み込んでくれることを。
私は一読者として願う。どのような形であれ、王国に幸福が訪れることを。
私は一読者として請う。全ての望まれし人々が、望まれし結末を迎えることを。
そして――私は一読者として信じる。猫庭に住まう人々が、傍観者である私を気にせず、のびのびと生きてくれることを。彼らが彼らを貫き、彼らのまま、彼らの幸せを掴み取ることを。



天に栄光、地に平安。
そうありますように。
by Iris-of-Amber | 2011-08-31 16:00 | 感想等(ネタバレ注意)


SFと青春小説しか書かない(書けない)遠山悠夏の小説公開&広報&備忘録。


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