鈴木先生観てきた
また売れない作品を好きになってしまった。
学校教育論や社会演劇論に興味がある人や教育関係者、またこれからそれに従事しようと思う方は必ず観て欲しい映画です。あとは学校が嫌いな人。好きだった人。日日日や元長征木が学校を破壊するのを見て痛快に思う人、スクールカースト物が好きな人は以下を読まず劇場に向かって欲しい。
以下ネタバレ感想
今回の話は生徒会選挙を中心に展開される。
生徒会選挙で有効投票率100%を目指す足子先生と、それに違和感を覚えながらも反論まではしない鈴木先生。全てはこの瞬間から掛け違いが始まる。
A組の生徒たちは鈴木先生に発破をかけられ、順調に立候補者が輩出される。
しかしそこで、生徒会には到底興味の無さそうな生徒が生徒会長に立候補した。
彼は生徒会選挙に恨みがあり、そのために立候補したのではないかと先生は疑い始める。
選挙のあとには文化祭が待っている。公園で演劇の練習をしていると、そこには中学のOBである男二人がタバコを吸っていた。
彼らはかつての優等生であり、学校での教育は社会の役に立たないと恨みを抱いていた。
「手の掛からない生徒」だった二人は、誰にも手を掛けてもらえずに大人になった。
別の公園で不審者が出たというニュースから公園の喫煙所が撤去される。
居場所を失った二人は、片方は母を襲い、片方は学校に殺意を向けた。
キレイなまま育ったら社会に殺される。だから俺が汚してやろう、と。
立ち合い演説会はつつがなく進行されていく。
問題の生徒の演説が始まった。そこで語られるのは、彼が抱く「選挙への疑問」だ。
真剣に考えられた投票でなければ、却って正しい結果を出せない。「人気のある人が当選する」
死票を出すような「選挙に関心がない生徒」は放っておけばいいじゃないか。彼らは選挙結果にも文句はつけないのだから、と。
そのために、自分が生徒会長になったのなら。この選挙の「システム」を変える。そう宣言した。
結果として彼が生徒会長に当選する。
ラストの立てこもり事件は割とどうでもよかった。学校教育の被害者としての役割であり、ただでさえ絵映えしないこの映画を盛り立てるための存在にすぎない。
OB二人はほんのりホモっぽくてよかったので、BL好きはそこに注目するといいだろう。
映画のざっとした流れは以上である。
私がなぜ涙を流したかは明白であろう。
システムの塊である学校で、システムに育てられる生徒から、システムの否定が実現されたからだ。
彼は静かにシステムに反逆していた。死票を提出することにより、システムを否定していた。
その彼が、追い詰められた彼がシステムに抗ったそのとき。確かにシステムにひびが入った。
そのひびはすぐに修復される物であっただろう。しかし彼は生徒会長になった。彼のシステムへの反逆に、生徒百人強が従ったのだ。その瞬間に、世界は、変わった。
自分の言葉に責任を持ち、本気で行動すれば、世界は変わる。
子供たちこそが世界を変える。そう信じる鈴木先生の成果こそがこの映画だ。
彼は生徒たちを変えた。その生徒たちが世界を変える。
舞城王太郎は「小説は祈りだ」と言った。
それに準えるのなら、教育も祈りであろう。
世界は誰が思っているよりも、少しだけ、優しい。
だから祈ろう。この世界に。自分に。次の世代に。
幸いあれ、と。
by Iris-of-Amber
| 2013-01-15 18:29
| 感想等(ネタバレ注意)
SFと青春小説しか書かない(書けない)遠山悠夏の小説公開&広報&備忘録。
by Iris-of-Amber
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
31 |
カテゴリ
全体雑記
小説(オリジナル)
小説(二次創作)
感想等(ネタバレ注意)
告知
サンプル
未分類
最新の記事
蔵書整理その2 |
at 2014-10-06 20:25 |
引っ越しに伴う蔵書整理 |
at 2014-10-02 20:23 |
マレフィセント観てきた |
at 2014-07-09 18:41 |
赤×ピンク観てきた |
at 2014-02-26 23:13 |
鈴木先生観てきた |
at 2013-01-15 18:29 |
以前の記事
2014年 10月2014年 07月
2014年 02月
2013年 01月
2012年 05月
2011年 08月
2011年 06月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2001年 06月