赤×ピンク観てきた

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坂本浩一監督、桜庭一樹原作『赤×ピンク』を見てきました!
私は大の桜庭一樹フリークで一時期は桜庭一樹研究者を志したこともあったのですが北村薫先生との対談で北村先生が「そのうち桜庭一樹研究とか出ちゃうかもよ?」と冗談めかして言った際に桜庭先生が「絶対イヤです!」とマジトーンで返したため封印することにしたのですが、これはあくまで映画の感想なのでセーフということで一つお願いします。

ちなみにエキストラで参加してきたので(観客役です、結構映ってた)そのときの様子についても少しだけ触れます。あと原作は読んでること前提とします。古い本だしね。













エキストラの撮影で空のオクタゴンに向かってわいわい騒いでるとき、対象があった方がやりやすいと思ったのだろう。水崎さんがオクタゴンの中に入って動いてくれた。メインキャストがやることじゃないが、いかにもミーコがやりそうなことで、思えばあのときにこの映画の成功を確信していたかもしれない。

とんでもない名作です。これは原作を読んでなくてもだし、原作付きとしても素晴らしい作品になった。「完璧」と言える。映画帯の「熱く、せつない青春ストーリー!」に反感を持ち続けていましたが、確かに映画は青春ストーリーでした。でも原作にあのコピーは許さない。
原作とはかなり変更点があります。一番大きな点としては安藤一門とのラストバトルですが、まゆが戻ってきたり、師範代とみーこの関係を無くしてまゆとの友情に絞ったり、千夏が頭から登場して重要人物に格上げされていたり、皐月とレズセックスしたり……正直心配でならなかったのですが、全てが完璧に機能していました。脚本の港丘彦さんは相当原作を読み込んだと見えます。全体的に男性陣のキャラが薄く役割が少なくなっていたのが残念ですが、まぁそれは尺もあるし全体としては別に大きな問題ではありません。
群像劇という表現上『赤×ピンク』のテーマは複数の受け取り方があると思います。この映画では「檻を壊すこと」に絞られました。誰かに閉じこめられる檻であり、自分で作っている檻でもある。自分が自分らしく生きるための障害となるオクタゴン。その檻を自ら壊すために。その檻から大切な人を助け出すために、格闘技をもって闘います。


  キャラごとに感想

「皐月がポニーテールぅ?」と最初は反感しかありませんでした。アクション映えするのは分かりますが皐月のキャラクターとしてショートしか有り得ないと思っていたからです。が、映画の皐月は確かに、あえて髪を短くしないのだと納得できました。心は男性であっても、身体は女性。自慰のシーン、妄想の中で皐月は男性を姿をしておらず、女性として千夏を犯していることからもそれは確認できます。
心情は全体としてより複雑に。生きることへの不器用さが際立つ演技でした。男性らしさがヒロインである千夏のお陰でより強調され、完全に姫を救う王子様。この相対によって、皐月は自身の男性性を受け入れられたのだろう。
バイト先は公立の図書館に変えられました。レンタルビデオ店の店長と太宰三島バトルを繰り広げるシーンが原作では大好きなのですが、映画ではカット。バイクのキーに金閣寺のキーホルダーを付けている部分で僅かに補填してくれたので「あぁ、削りたくなかったんだな」と伝わってきました。

ミーコさまはストーリーとして様々なしわ寄せが来た感じがあります。師範代との関係は無し(上客は社長に差し替え、そのことから最終戦の舞台が整う。SMクラブを辞めることもない)、格闘技へと導く役が皐月に。皐月の性同一に気づきながら知らないフリをしている設定も追加されます(これは納得)。ストーリーを進めるための立ち回りが多く、月刊シナリオのインタビューにもある通り皐月とバディに近い関係を結んでいます。悩みながらも「千夏を救う」という信念を持つ皐月と、自身に欲望がないからこそそれを手伝おうとするミーコの関係ですね。それゆえに主人公の介添え人に収まってしまうのですが、ある意味ミーコらしいとも言えます。それでもやはりポテンシャルが違う(原作はミーコ編が一番好きなので)。皐月と千夏がパートナーとなったので、ミーコはまゆとパートナー役に。
「なんか、ほっとけないんだよね」
求められることに応えるだけだったミーコが、初めて求めたのがまゆなのかもしれない。
ミーコを救う存在は現れず、彼女は自らの力(格闘技の力)によって檻を壊します。ゆえに物語の中心には居ませんが、非常に魅力的な助演として存在します。

まゆは幼さが強調され、母から受けた仕打ちが強いトラウマとして描かれます。メイン四人の中で最も大きな檻に閉じ込められているとも言えます。
私が一番衝撃的だったのは、結婚しようと言ってくる男性に連れ出されたあと、男性が母親同様に檻へ閉じ込めたことでした。原作では描かれないその後、私はそうなるとは到底思っていなかったからです。まゆは過去と対峙し、自らの過去を聞いてくれたミーコたちのところへ戻ることを決意して「檻を乗り越え」ます。
父が自分を助けてくれると思ってた。頭を撫でて欲しかった。確かにまゆはそう望んでいた。けれど彼女は、自ら立ち上がり闘うことを覚えた。ラストでミーコに言う「最後まで立ってたよ」は、闘うことを教えてくれたミーコへのお礼の言葉だろう。

  総括
皐月、ミーコ、まゆの母親がそれぞれハッキリと描写されていることからも明らかなように、映画は「母という檻」を脱却する物語(『ファミリーポートレート』『少女七竈と七人の可愛そうな大人』あたりが類似だろうか)になっている。男性陣、特に武史の役割が少なくなったことで女性だけの世界が強調され全体として見やすい構成になっている。ラストの「――ただいま。帰ってきたよ。」は「ただいま」だけにした方がクドくなくていいんじゃないかと二回見ても感じたがインタビューによると脚本の港さんはこの文章を読んで泣き、ここに繋げようと決意したそうなので納得できた。
とにかく文句なしに素晴らしい映画。すべての桜庭一樹フリークは何を捨ててでも見に行かなければならない。(同時に『私の男』のハードルが劇的に上がってしまったなぁ、とも思った)



  以下雑に箇条書き

ミーコまゆコンビが原作から大好きなのでたまらなかった。ユウジョウ!
品川さんが案外悪くない。
濡れ場は必要な濡れ場だった。そも原作から男性向けエロ本を見つけられたことが語られるんだから、皐月の男性としての性欲には触れざるを得ないのだ。
ガールズブラッドの他キャストがいい意味でキャラ立ちすぎ。コゼットが好きです。
乱丸めっちゃ楽しそう。乱丸と社長がギャグ担当としてリズムを作っている。
スタッフロールで客とキャストの絡みがおまけとして流れるんだが、ガールズブラッドが存続したあとの風景に見えてなかなか良かった。なんでまゆは指名ないんだろう。千夏もないから新人であることが理由かな?
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by Iris-of-Amber | 2014-02-26 23:13 | 感想等(ネタバレ注意)


SFと青春小説しか書かない(書けない)遠山悠夏の小説公開&広報&備忘録。


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